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毎日がクリスマス

カトリック司教 幸田和生のブログです。説教メモなど

年間第3主日



1月26日「小高交流センター」がオープンしました。震災前13,000人いた南相馬市小高区に、今は3,000人の人が住んでいます。その方々の交流の場になることが期待されています。
わたしが行ったのは、翌27日(日)ミサの後。おおぜいの人が来ていましたが・・・

●年間第3主日、世界こども助け合いの日
 聖書箇所:ネヘ8・2-4a, 5-6, 8-10/一コリント12・12-30/ルカ1・1-4, 4・14-21
     2019.1.27カトリック原町教会
 ホミリア
 きょうの福音は、ルカ福音書の序文と、かなり飛んでイエスの活動の始まりの箇所です。ナザレの会堂でイエスは、イザヤ書61章を朗読しました。そこにイエスの活動とはどういうものなのかがはっきりと示されています。それは一言で言って、「貧しい人に福音を告げ知らせる」ことでした。
 聖書の中の「貧しい人」という言葉は広い意味を持っています。「貧しい人」というのは経済的に苦しい状態の人ももちろんそうですが、それ以外のさまざまな理由で圧迫され、小さくなっている人々のことです。今日のイザヤ書の中に「捕らわれている人、目の見えない人、圧迫されている人」とありますが、それらすべての人も含んでいます。神の救いを必要としているすべての人、と言ってもいいでしょう。現実的に、経済的に貧しい人のことを決して忘れてはいけませんが、それだけではない、という面も大切です。

 去年、『万引き家族』という映画を見ました。是枝裕和監督の作品で、リリー・フランキー、樹木希林、安藤サクラなどが出演していました。日本だけでなく、世界各国で大きな賞賛を得ている映画のようです。下町に住む一つの貧しい家族があって、その家族は一見、普通に働いているように見えるけれど、実は万引きやさまざまな小さな犯罪によってなんとか経済的に成り立っている。でもそこには家族の絆があって、互いの思いやりと笑いがそこに満ちている。でもその関係はいつまでも続くわけではなかった・・・とまあ、物語は見てくださればいいのですが、そこで問われているのは「関係の貧困」ということではないかと思いました。今の日本の中で、お金がない、という貧しさだけでなく、誰にも頼れない、社会から孤立している、そういう貧しさがある。映画の中の家族は、貧しくともある意味で家族の温かいつながりで生きているわけですが、それも本当のものかどうか、実はあやしい。映画の中の家族は崩壊していくのですが、それではあなたがたはどうなのか、経済的には困っていないかもしれない。でも本当に豊かな人と人、家族の間の関係を生きているか、わたしたちもやはり関係の貧困という問題を抱えているのではないか、そんな問いかけを感じさせられる映画だったと思います。

 シングルマザーが働きながら、子育てをしている。経済的にたいへんでも何とかやっている。でもいざ病気か何かになり、本当に困ったときに親にも誰にも頼れない、相談もできない、そういう関係の貧困という問題があります。仮設住宅に住んでいた一人暮らしのお年寄りが、復興公営住宅や災害公営住宅に移って、鉄とコンクリートに囲まれた部屋の中で、孤立してしまう、そういう関係の貧困があります。一方でリーマンショックのとき、多くの日系ブラジル人が仕事と住む家を失いましたが、ほとんどホームレスにならなかった、という話もありました。彼らは仲間に住む場所がないということになると、自分のアパートがどんなに狭くても、泊めてあげる。だからホームレスにはならなかったというのです。今の日本人ではほとんど失われ、忘れられてしまった関係性でしょう。

 まあ、とにかく、いろいろな形での貧しさがあります。その人々にイエスは福音(良い知らせ)を告げました。神はあなたがたを決して見捨てていない。神はあなたがたの父であり、母であり、王であり、牧者である。あなたがた一人ひとりを限りなく大切にしてくださっている。その神に信頼しなさい。そしてあなたはわたしの兄弟であり、姉妹なのだ。あなたはわたしにとってかけがえのない、大切な人。それこそが福音でした。
 イエスはこの福音を言葉と行動、人との関わりをとおして伝えました。それを受け取った人々は新しい神との関係、新しい人と人との関係に招き入れられました。これが福音書の伝える世界です。2000年前にイエスの周りで実際に起こったことです。

 今のわたしたちはそれをどう受け取ったらいいのでしょうか。
 神の国の福音、貧しい人々への福音というのは、あくまでも呼びかけです。どこかで神の国が始まっているらしい、とか、そのうち神はご自分の国を完成してくださる、そんなものが福音ではないのです。
 「この聖書の言葉は、今日、あなたがたが耳にしたとき、実現した」とイエスは宣言しました。わたしたちが聖書をとおして、今日、呼びかけてくるイエスの言葉をしっかりと受け取り、それに精一杯応えようとする中で、この福音は実現していきます。神の国は実現していくのです。
 わたしたちにできることは本当に小さなことです。でもわたしたちがわたしたちの生活の中で、イエスの福音の世界に少しでも近づくことができますように、今日、心を合わせて祈りましょう。



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