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カトリック司教 幸田和生のブログです。説教メモなど

平和憲法とカトリック教会の教え

10days for peace


 平和を実現するキリスト者ネットの『ニュースレター』No.139(2013.9.10発行)に寄稿した文章です。

    平和憲法とカトリック教会の教え

 今年も8月6日〜15日、日本カトリック平和旬間が行われました。ヨハネ・パウロ2世教皇の広島での平和アピール(1981年)に応える形で毎年、この平和旬間が行われています。東京教区の今年のテーマは「平和憲法と教会の教え」。司教としてのコメントを求められた機会に以下のようなお話をさせていただきました。

 日本の憲法とカトリック教会の教えはイコールではない。日本は1945年の敗戦を機に、戦争への反省から、戦争放棄と軍隊の不保持を憲法で定めるようになった。教会の教えとしてはヨハネ23世教皇が1963年、回勅『パーチェム・イン・テリス(地上の平和)』で、「原子力の時代において、戦争が侵害された権利回復の手段になるとはまったく考えられません」と述べた。またヨハネ・パウロ2世教皇は紛争が起こるたびに武力行使に断固反対の意思表示をしてきた。日本の司教団も、戦後50年に「平和への決意」、戦後60年には「非暴力による平和への道」というメッセージを発表した。こうして見ると、教会の教えが日本国憲法の精神に少しずつ近づいてきたのがわかる。
 武力によらない平和を希求する日本国憲法の精神は、その前文に表れている。この精神を実現するために、政府に対して戦争と軍隊の保持を禁じたのが第9条である。憲法は政府の暴走から国民を守るためのものだということを忘れてはならない。
 憲法を変えて、あるいはその解釈を曲げて、現政権が向かおうとしているのは軍事力(防衛力)の強化である。小さな島の争奪戦を制してもそれで紛争が解決するはずはない。それは長く続く悲惨な戦争の始まりでしかない。まさか本気でそうしたいのではあるまい。だとしたら、日本が軍備を増強することによって、他国の侵略を抑止するという考えなのだろうか。この抑止力という考えをどう乗り越えるか? 憲法前文は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して」というが、本当にそれで平和が守れるかと不安に思う人は少なくない。しかし、教会の教えは軍備競争による抑止力という考えをはっきりと拒否する。「軍備競争は人類の最大の傷であり,堪えがたいほどに貧しい人々を傷つけるものである」(『現代世界憲章81』)。問題は抑止のための軍備増強には歯止めが利かないということ、それによって多くの人の生命・生活が奪われて行くこと。軍事力というものがいったい誰を、何を守ろうとしているのか、本当に問われなければならない。沖縄の現実にその答えがあるではないか。
 戦争のできる国を作るということは、外国に力で対抗するというだけではない。それ以前に、国内で戦争に反対する意見を抹殺しなければ、外国との戦争はできない。戦争に人権抑圧はつきものである。政府は「国民を守る」と言いながら、本当は何を守ろうとしているのか。周囲の強国に対抗するため自分たちにも王を求めたイスラエルの人々に対する、サムエル記上8・11—18の警告を噛み締めたい。
                            (こうだ かずお)

 以上が掲載記事ですが、文字数の関係で載せられなかったサムエル記上8章の言葉を前後も含めて紹介します。

 4イスラエルの長老は全員集まり、ラマのサムエルのもとに来て、5彼に申し入れた。「あなたは既に年を取られ、息子たちはあなたの道を歩んでいません。今こそ、ほかのすべての国々のように、我々のために裁きを行う王を立ててください。」6裁きを行う王を与えよとの彼らの言い分は、サムエルの目には悪と映った。そこでサムエルは主に祈った。7主はサムエルに言われた。「民があなたに言うままに、彼らの声に従うがよい。彼らが退けたのはあなたではない。彼らの上にわたしが王として君臨することを退けているのだ。8彼らをエジプトから導き上った日から今日に至るまで、彼らのすることといえば、わたしを捨てて他の神々に仕えることだった。あなたに対しても同じことをしているのだ。9今は彼らの声に従いなさい。ただし、彼らにはっきり警告し、彼らの上に君臨する王の権能を教えておきなさい。」
 10サムエルは王を要求する民に、主の言葉をことごとく伝えた。11彼はこう告げた。「あなたたちの上に君臨する王の権能は次のとおりである。まず、あなたたちの息子を徴用する。それは、戦車兵や騎兵にして王の戦車の前を走らせ、12千人隊の長、五十人隊の長として任命し、王のための耕作や刈り入れに従事させ、あるいは武器や戦車の用具を造らせるためである。
 13また、あなたたちの娘を徴用し、香料作り、料理女、パン焼き女にする。
 14また、あなたたちの最上の畑、ぶどう畑、オリーブ畑を没収し、家臣に分け与える。
 15また、あなたたちの穀物とぶどうの十分の一を徴収し、重臣や家臣に分け与える。
 16あなたたちの奴隷、女奴隷、若者のうちのすぐれた者や、ろばを徴用し、王のために働かせる。
 17また、あなたたちの羊の十分の一を徴収する。
 こうして、あなたたちは王の奴隷となる。18その日あなたたちは、自分が選んだ王のゆえに、泣き叫ぶ。しかし、主はその日、あなたたちに答えてはくださらない。」
 19民はサムエルの声に聞き従おうとせず、言い張った。「いいえ。我々にはどうしても王が必要なのです。20我々もまた、他のすべての国民と同じようになり、王が裁きを行い、王が陣頭に立って進み、我々の戦いをたたかうのです。」
 21サムエルは民の言葉をことごとく聞き、主の耳に入れた。22主はサムエルに言われた。「彼らの声に従い、彼らに王を立てなさい。」



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