毎日がクリスマス

カトリック司教 幸田和生のブログです。説教メモなど

『福音の喜び』シンポジウムの開会あいさつ

140628

2014.06.28聖イグナチオ教会にて

社会司教委員会、正義と平和協議会共催
教皇フランシスコ 使徒的勧告『福音の喜び』シンポジウム

お陰さまで、ヨセフホールが満員になるほどの盛況でした。
以下、幸田の開会あいさつ(原稿)です。

 『福音の喜び』シンポジウムにご参加くださいましてありがとうございます。雨にもかかわらず、こんなに多くの方に参加いただきましたこと、とても嬉しく思っています。
 わたしはカリタスジャパン担当司教で、社会司教委員会の副委員長である東京教区の幸田です。正義と平和協議会とともに共催させていただいている社会司教委員会の一員としてご挨拶させていただきます。社会司教委員会委員長の大塚司教(京都教区)、正義と平和協議会会長の勝谷司教(札幌教区)がともに参加できないためです。
 今回のシンポジウムはもともと正義と平和協議会の企画でした。昨年11月、信仰年閉幕の日にフランシスコ教皇は使徒的勧告『福音の喜び』を発表しました。この使徒的勧告は、2012年の秋に行なわれた「新しい福音宣教」をテーマとしたシノドス(世界代表司教会議)の司教たちの提言に対する回答として発表されました。しかし、それを読んだ人たちは、その内容が単なるシノドスの提言への回答を超えて、フランシスコ教皇の施政方針のようなものだと感じたそうです。―福音の核心への集中。その福音の喜びを生きることを中心にする。そしてこの福音は社会的次元を持っていること。だから貧しい人を排除しない社会と教会へ―
 今の教皇の考えを表すという意味で、非常に重要な文書であることは明らかでした。そこで正義と平和協議会では、この書を多くの人に知ってもらうためのシンポジウムを発案したのです。ふだん、神学的な立場から正義と平和協議会に関わっている3人の司祭(神学や社会倫理の専門家)に協力をお願いして、このシンポジウムを行なうことになりました。

 一方、社会司教委員会は、当初は別のことを考えていました。信仰年は第二バチカン公会議開幕50周年を記念して始まりましたが、公会議の閉幕は1965年のことでした。最後に「Gaudium et Spes=現代世界憲章」が発布されました。現代世界に対する教会の姿勢をはっきりと打ち出した文書です。その50周年にあたって、この文書をもう一度、きちんと学び直そう、それも2015年になってからでは遅いので、2014年から始めて学び直そうと考えていました。ちなみに社会司教委員会とは、「正義と平和協議会」、「難民移住移動者委員会」「部落差別人権委員会」「カリタスジャパン」からなっています。
 その一方で、司教協議会では、2015年の現代世界憲章50周年も大切だが、2014年の「Lumen Gentium教会憲章」50周年も大切だという声が起こりました。確かに教会憲章によって、教会の自己理解が大きく変わり、そこから社会との関わりが新たにされたのですから、おっしゃることはもっともです。そこで司教協議会として、2014—2015年、2年間かけて、GSとLGを学び直そうと呼びかけることになったのです。今年のはじめのことです。
 しかし、この「Evangelii Gaudium福音の喜び」を読んだとき、司教たちの思いは少し変わりました。50年前の公会議公文書の記念というよりも、今の教皇は、もちろん第二バチカン公会議を前提としながら、今の世界・社会の現実をもっと直接的に見つめていて、その中で本当に教会が福音を告げる使命を生きるように、と呼びかけている。だからわたしたちも、単に50年前の文書を学び直そうというより、このフランシスコ教皇の使徒的勧告を使って、今の世界の現実を見つめ、その中での教会の使命を見つめ直したほうがいいのではないか、とそういう話になったのです。

 いろいろな意味で世界の状況は50年前と変わっています。教皇の指摘は、
① グルーバル化した経済。「抑圧と搾取」から「格差と排除」へ。
② 50年前は冷戦の時代。今は暴力とテロと内戦などなど。
経済的格差や排除がもたらす暴力。軍需産業の罪。
一方で希望を失った人々が暴力に走り、一方で巨大な戦争関連産業が利益を得ている。
③ 情報化、グローバル化。その中で目に見えるもの、お金の支配
④ 家族の絆の弱体化。都市化。
⑤ 教会・小教区の改革が不十分(神のあわれみの場となるべきなのに)
⑥ 宣教者を蝕む「実践的相対主義」。熱意の低下、敗北感なども
〜日本のわたしたちにとっても、たぶん共感するところが多いでしょう。
 そういう中で、この使徒的勧告は励ましを与えてくれます。教皇の言うことはそれほど突飛なことではありません。むしろ当たり前のこと。しかし、「当たり前のことを言ってくれている」それがすごい励ましなのだと思います。今日のシンポジウムはその『福音の喜び』を理解するための一つのチャンスなのです。

 今日の集まりは、わたしの中ではもう一つの集まりとつながっています。
 それは10月13日に東京の関口カテドラル(ケルンホール)で行なわれる「カリタス反貧困キャンペーン・アクションデー」のイベントです。その日の基調講演をしてくれるのは浜矩子さんという国祭経済学者です。彼女にお願いしているのは、経済学者として、フランシスコ教皇の『福音の喜び』をどう読んだか、というテーマです。教皇はこの使徒的勧告の中で「格差と排除をもたらす経済にはっきりとNoと言うべき」だと語っています。経済学者として、安倍政権の政策を鋭く批判している浜矩子さんから見て、この使徒的勧告はどう読めるか。

 わたしたち日本に住む多くの者は、今の政権の暴走に危機感を抱いています。あまりの経済優先。景気のことばかり考えて、貧しい人を切り捨てていくやり方。福島や沖縄の人々を切り捨てて行くやり方。隣国との関係悪化とその放置。そして戦争に向かうあまりにも強引なやり方に危機感を抱いています。わたしたちは本当に厳しい状況にいると思います。その中で、教会として、キリスト者としてどうしたらいいのか、そのヒントをこの使徒的勧告からもらいたいとも思います。
 しかし、フランシスコ教皇はいつも強調しています、教皇がすべての問題の解決を持っているのではない、と。それぞれの国や地域の問題にどう向き合うかは、その地の教会、その地の司教団の課題であると言っています。わたしたちが目の前の現実を見つめ、そのわたしたちの現実の中で福音の喜びをすべての人と分かち合っていくのだという、その覚悟をしっかりと持ちながら、今日の話を聞きたいと思います。


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