毎日がクリスマス

カトリック司教 幸田和生のブログです。説教メモなど

主の降誕・日中のミサ



●主の降誕・日中のミサ
 聖書箇所:イザヤ52・7-10/ヘブライ1・1-6/ヨハネ1・1-18
カトリック原町教会にて
 ホミリア
 クリスチャンになって40年、司祭になって30年以上経ちますが、今でもときどきキリスト教というのは不思議な宗教だと思うことがあります。
 わたしたちはイエスがどんなことをしたか、福音書をとおして知っています。
 貧しい人に福音を告げ、病人をいやし、悪霊に苦しめられている人を助け、わずかなパンで大群衆の飢えを満たし、会堂や山の上で人々に教えました。たくさんの力あるわざを行い、たくさんの力あることばを語られました。
 でもキリスト教がイエスの生涯の中心に見ているのは、そういういろいろなことをしたイエスではなく、何もしないイエス、何もできないイエスです。

 十字架のイエスは、十字架の木に釘付けられ、動くこともできません。「十字架から降りてみろ」と言われても降りて来ることができません。マルコやマタイ福音書は特にそうですが、十字架のイエスは、ほとんど話すこともなく、無力なただの苦しむ人になりました。
 今日祝っている降誕の場面のイエスもよく似ています。飼い葉桶の中で、自分で動くこともできません。何をすることもできず、何を話すこともできず、ただオギャーオギャーと泣いているだけです。
 そんなイエス。そんな無力なイエスの中に、神の栄光を見る。神の愛の最高の表れを見る。それがキリスト教です。へんな宗教、いや、不思議な宗教ですよね。

 わたしたちはその無力なイエスの姿の中に何を見るのでしょうか。
 一つには、イエスという人間の、苦しむすべての人と共感する姿を見るのです。貧しく、飢え渇き、着るものも住む家もない人々。病気で弱り果てた人々。死に直面している人々。その人々の重荷や苦しみを一緒に味わい、とことんその人々と痛みを分かち合うイエスの姿を見るのです。イエスがあれほどの貧しさの中で生まれたこと、イエスがあれほどのみじめさと苦しみの中で死なれたこと。そこに、イエスという方のすべての人に対する極限までの愛を見るのです。

 そしてそのイエスの姿を見た時、実はそこに神の姿が本当の意味で表された、ということを知ったのです。神は天の高みで、人間を見下ろしておられるような方ではない。イエスという人間の姿をとおして、神ご自身がわたしたちと同じところにまで降りてこられた。貧しさの中で誕生し、ボロボロになるまで傷ついて命を落とされたそのイエスの姿をとおして、神の本質が愛そのものであることが表された。わたしたちはこの無力なイエスの姿をとおして、そのことを知ったのです。

 クリスマスはイエス様の誕生祝いです。そう言えば、分かりやすいですね。クリスマスがキリスト教の教祖様の誕生日だということは多くの日本人が知っています。そして、信者でない人も何となくおめでたいと感じて祝ってくれるでしょう。それはそれでありがたいことです。
 でもこの方がわたしたち人類にとって決定的な意味を持つ方であり、自分の救い主である、そう信じるときにこそ、本当の意味でクリスマスを喜び祝うことができます。
 「クリスマス」という言葉は、もともとChrist Mass=「キリストのミサ」だと言われます。今日もクリスマスを祝ってミサをします。ミサの中心テーマはいつもイエスの受難と復活です。誕生のお祝いに、どうして死の記念をするか。もしかしたら、信者でなくて、はじめてクリスマスのミサに来た方は驚かれるかもしれません。でもイエスの誕生を祝うことは、イエスの生涯全体の意味を深く受け取るからこそ意味があることなのです。

 飼い葉桶と十字架はつながっています。
 ベツレヘムとゴルゴタはつながっています。

 その中で今日の福音の言葉を深く味わいたいと思います。先ほど読まれたのはヨハネ福音書の冒頭の部分です。一人の男の子の誕生という出来事を、ヨハネは、永遠の神のみことばがわたしたち人類の一員となったことだと受け取ります。分かりにくいかもしれません。でも「飼い葉桶と十字架はつながっている、ベツレヘムとゴルゴタはつながっている」そう思いながら味わってください。

 「初めに言があった。言は神と共にあった。言は神であった。この言は、初めに神と共にあった。万物は言によって成った。成ったもので、言によらずに成ったものは何一つなかった。」(ヨハネ1・1-3)
 「言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。わたしたちはその栄光を見た。それは父の独り子としての栄光であって、恵みと真理とに満ちていた。」(ヨハネ1・14)
 「いまだかつて、神を見た者はいない。父のふところにいる独り子である神、この方が神を示されたのである。」(ヨハネ1・18)

 この方の誕生を心から喜び祝って、今日のミサをささげましょう。


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