毎日がクリスマス

カトリック司教 幸田和生のブログです。説教メモなど

聖家族の祝日のミサ



降誕祭の後の日曜日は、イエス、マリア、ヨセフの家族を祝う「聖家族の祝日」。
写真は原町教会の聖堂のヨセフ像です。

●聖家族の祝日
 聖書箇所:創世記15・1-6, 21・1-3/ヘブライ11・8, 11-12, 17-19/ルカ2・22-40
     カトリック原町教会にて
 ホミリア
 今日の福音には二人の高齢者が登場します。シメオンとアンナです。
 シメオンは「主が遣わすメシアに会うまでは決して死なない」というお告げを聖霊から受けていましたが、幼子イエスを見てその子がメシアだと分かり、「主よ、今こそあなたは、お言葉どおり、この僕を安らかに去らせてくださいます」と言いました。ですからかなりの高齢だったのでしょう。アンナのほうは84歳の女預言者と言われていて、この幼子イエスが救い主であると人々に伝えました。
 この二人はずっと救い主を待ち望んでいた旧約の人々の代表のようです。二人が高齢なのは、待ち望んでいた期間がとても長かったことを表しているのでしょうか。それだけでなく、高齢であるがゆえに、特別、知恵に富んでいて、この幼子こそ待ち望んでいた救い主であると悟ることができたという面もあるのでしょう。

 幼子イエスを囲む人々の集い、ここには大きな家族が示されているとも感じます。
 家族はふだん一緒に暮らしている人だけが家族なのではありません。ちょうど今、年末を迎え、昨日あたりは、ふだん会えない家族と再会するために、日本中で人々の大移動が起こっていました。正月であっても会えない家族もいますが、でも、特別に遠くにいる家族のことを思うときでもあるでしょう。そういう大きな家族を思うのが、日本では正月ですね。さらに言えば、血のつながりはなくとも、今日の福音には幼子イエスと両親を取り囲む人々の姿があります。これも大きな家族と言えるかもしれません。「イスラエルの家」という大きな家族が感じられます。この家族としての連帯感は、狭い民族主義になると危険ですが、血縁の家族よりもっと広い人と人とのつながりというものは、とても大切です。高齢者も若い人も、幼い子どももいて、そういうつながりの中で生きている。そこに未来への希望と信頼が生まれてくるのです。

 先日、今年の推定出生数が発表されました。それは94万人で、二年連続100万人を下回り、統計を取り始めた1899年以来、最低となったとのことです。一方、死亡者の数は134万人。単純計算すると40万人の人口減ということになります。日本はほんとうに人口減の社会になっています。少子化の中での社会保障の問題とか、少子化を食い止めるための子育て支援とか、いろいろなことが言われていますが、未来に対する希望と信頼がなければ、この状態はますます深刻になっていくと思います。
 若い世代の人たちは明るい未来を思い描けているでしょうか? たぶん多くの若者はそうではないように感じます。でも、これは本当は若い世代の問題ではありません。むしろ、もっと上の世代が、目先のことばかりを追い求めてきた結果なのではないかと思います。どうすればもっと経費が節減できるか、どうすればもっと効率的か、そういうこと、目先のことばかりを求めてきてわたしたちの社会は未来を見失ってしまったのではないでしょうか。

 フランシスコ教皇の言う、「時間は空間にまさる」という言葉を最近よく思い出します。この言葉は、何でも今すぐ、すべてを解決しようとするのではなく、長い時間をかけて地道によりよいものを作っていくことが大切だ、という意味だとわたしは理解しています。時間をかけて何かをしていく、ということが今の世界では忘れられがちです。目の前の利益ばかりを求めてしまうのです。本当に一人一人の人間を尊重し、いのちを大切にする社会を作るには50年、100年ぐらいの時間を見なければならないはずです。そういうものが後回しにされて、原発再稼働、リニア新幹線、オリンピック、基地建設、防衛力増強などに走る、本当に悲しいことです。結果的に、人は未来に希望を持てなくなってしまうのです。

 わたしには甥や姪がいて、その子どもたちの成長はほんとうに目を見張るものがあります。そして、幼い子どもたちはやはり未来に続く時間というものを強く感じさせてくれます。今日は大晦日。一年が終わって、まったく新しい一年が始まる。そう思ってもいいのですが、むしろ、時間はずっと続いていく。その中で、子どもたちは成長していく。その未来を信じ、未来を作っていく、それが大人の責任だと思いますし、それが家族の役割だと言ってもいいのではないかと思います。
 もちろん、子どものいない家族もあります。わたしもそうですが、今や日本でもっとも多い世帯構成は一人世帯になっています。でもやはり、人は一人で生きているのではない、今、支え合って生きるつながりによって生かされている、それだけでなく、過去から未来へと続くいのちのつながりによって生きている、その感覚を大切にしたいと思います。今日の福音のシメオンやアンナの姿はそういうつながりに生きる大きな家族の姿を示しているように感じます。

 聖家族の祝日にあたり、すべての家族が、すべての人が祝福されますように祈りましょう。


PageTop