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毎日がクリスマス

カトリック司教 幸田和生のブログです。説教メモなど

教皇と東日本大震災・福島第一原発事故被災者との集い



説教メモは今週もお休みです。
フランシスコ教皇の被災者との集いで教皇入場前のあいさつを担当させていただきました。
わたしはこの後の教皇のメッセージの内容を知らず、教皇もわたしのあいさつの内容を知らなかったのに、
不思議とつながっていると感じているのはわたしだけでしょうか?

教皇のメッセージはこちら

●東日本大震災・福島第一原発事故 被災者との集い あいさつ
               2019/11/25幸田
 おはようございます。
 わたしはカトリック東京大司教区の元補佐司教の幸田と申します。震災の2011年からいろいろな形で大震災と原発事故の被災地に関わらせていただいていますが、特に三年前から、福島第一原子力発電所の北側25kmほどのところにある、カトリック原町教会とカリタス南相馬で働かせていただいています。
 昨年6月に補佐司教という役目からは退任させていただき、そのおかげで、皆様と一緒にここにいることができています。現役の司教たちの多くはいろいろあってここに来られないのです。そういう事情で、わたしもこの集いの準備に関わってきた者として、僭越ですが、司教団に代わって皆様にごあいさつさせていただきます。

 本日は、フランシスコ教皇の、東日本大震災・福島第一原発事故被災者との集いのためにわざわざ岩手、宮城、福島から東京都心のここまでお越しくださいましてありがとうございます。
 フランシスコ教皇に東日本大震災と福島第一原発の被災地に来ていただきたいという声は以前からいろいろな方によって上がっていました。わたしも教皇が日本に来られるのであれば、ぜひ被災地に、特に福島に来てくださることを、強く願っていました。福島県南相馬市には野馬追祭場という広大な場所があり、そこで教皇ミサをささげてもらうことを夢見ていました。しかし、日程の関係でどうしても被災地まで足を運んでいただくことはできないということになり、こうして教皇が被災者を東京に招く形で、被災者の中のわずか150人ほどの方々ですが、会っていただくことになりました。そしてまた、これまでいろいろな形で被災地支援に関わってきたわたしたち関係者をも招いていただきました。
 今回、この教皇と被災者の集いで、証言をする方を三人お願いしました。津波被災の方お一人と、福島関係の方お二人ということになりました。壇上にいる被災者の代表の方も、半分ぐらいが原発事故・放射能災害の被災の方々になっています。教皇は「三重の災害」、つまり本当に多くの方が犠牲となった大地震、大津波とともに、原発事故という「三重の災害」とおっしゃっていますので、原発事故のことにやや比重が置かれています。岩手、宮城の方にはその点、申し訳ない気もしますが、ご理解いただきたいと思います。

 今回、わざわざ東京まで来てくださった被災者の中には、ローマ教皇とはどういう人か、よくご存じない方もいらっしゃると思います。少しだけ説明させてください。
 教皇は一面では、バチカン市国という国の国家元首であり、今回の訪日も国家元首として日本を訪問するという面がなくはありません。日本政府からすれば、今回の訪日を日本とバチカンの二国間の関係を深めるものにしたいという期待があるようです。
 しかし、教皇を理解していただくために大切なのは、やはり宗教者としての面です。カトリック教会は全世界で13億人の信者を擁する世界最大の宗教団体だと言われています。カトリック教会というのはローマ教皇をトップとした中央集権的な組織かというと、そうでもなくて、基本的な単位はそれぞれの土地の司教区と言われるものです。ここ東京都と千葉県の教会は東京教区で、菊地功大司教がその一致の要です。青森、岩手、宮城、福島の4県は仙台教区という司教区になります。平賀徹夫司教が一致の要です。日本にはこういう司教区が16あります。全世界には二千以上あるそうですが、この司教区がカトリック教会の基本的単位なのです。では、その司教区はそれぞればらばらなのかというとそうではなく、すべての司教は一つの司教団として繋がっていて、その全世界の司教団の一致の要が、ローマの司教(=教皇)なのです。
 そういう意味で、教皇は13億人のカトリック信者の一致の中心であり、最高の指導者ということになります。と同時に、全世界の牧者(=羊飼い)として、カトリックでないすべての人、特に苦しむ人、貧しい人、周辺に追いやられ、忘れられようとしている人々にたいへん心を砕かれている方です。

 フランシスコ教皇は訪日にあたって、大地震、大津波、福島第一原発事故という三重の災害にあわれた方々と会い、その方々の声を聞きたいと望んでおられます。
 昨日フランシスコ教皇は長崎と広島を訪問して、核兵器廃絶に向けた大切なメッセージを語られましたが、2017年11月に教皇庁で行われた「核兵器廃絶と包括的軍縮のためのシンポジウム」の席でも次のようにあいさつされていました。
 「大量破壊兵器、なかでも核兵器は、偽りの安心感を与えるに過ぎず、人類家族の中での平和的共存の基盤とはなれません。その意味で、被爆者のかたがた、広島と長崎の爆弾で被害を受けた人々、また核実験による犠牲者の証言は貴重です。そのかたがたの預言的訴えが、とりわけ若い世代にとって、警告となるはずです。」
 同じ思いで、教皇は地震・津波・原発事故の被災者・被害者の証言を聞きたいと願って、この集まりを呼びかけられました。現実にはとても短い時間しか取れないので、本当にわずかしか聞くことができません。皆さんの声を直接聞きたいという教皇の思いを妨げるような動きもあったかもしれませんが、この教皇の思いをどうか感じながら、今日の教皇との出会い、そして教皇のメッセージを受け取っていただければと思います。

 最後に原発のことを一言お話しします。日本カトリック司教団は2011年11月に「今すぐ原発の廃止を」というメッセージを発表し、「いのちを守る」という立場から脱原発を訴えています。政治や経済効率の問題ではなく、いのちの問題として、原発のことを考えようと呼びかけています。しかし、今の日本政府の方針は、原子力発電を維持していくというものです。この国に来て、この国の具体的な政策に反対するような発言を教皇に期待することはできないと思います。ただ本当に、今回の訪日のテーマに掲げられた「すべてのいのちを守るため」、その観点から今日、教皇がわたしたちに何を語りかけてくださるのか、ご一緒に受け止めたいと思います。
 この集まりへの皆様のご協力に感謝し、教皇の到着を心静かにお待ちいただきますようお願いして、わたくしのあいさつとさせていただきます。



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